ことは何か、林業機械への補助だとか技術開発への補助だとかをしているけれども、もっと直截的に林業家が一番求めている林道をつけることはできないのかということを事前に質問しました。すると、「林道はちょっと大変ですよ」と長官がいわれるわけです。「じゃあいくらくらいあればいいんですか?」と聞いたわけです。高速道路は9,342キロあって、さらに延長する整備計画があった時代でしたから、これに近いようなものを林道整備で出したらどうですか?と。10年でということではなくて30年、40年かけてでも毎年少しずつでも進んでいけば林業家にも奮い立つものがあるのではないですか?と。
 当時の林野庁長官は私の前では、「わかりました」といったので振付まで決めていたのですが、予算委員会の質問では答えないんです。概算でどれくらいか分かりかねますというようなことをいって。
岸本氏  言わないんですか! それは主計局に止められているからですね。
鶴保氏  そういうことだと思います。たぶん数兆円の話だと思います。例えば3兆円であれば毎年1000億円で30年あれば3兆円になりますねというのが私の次の質問だったのですが、そうはいかないわけです。
事務局  今、自民党の中では林業や森林についての関心は高まってきていますか?
鶴保氏  1997年の京都議定書以来CO2削減への関心が高まって、2001年に和歌山県等の提言で緑の雇用制度が始まったころは非常に意識が高まっていました。しかし、2011年の東日本大震災があって、それどころではないということで正直動きが止まってしまっていたところがあったと思います。
岸本氏  それにしても、これは重要な問題です。政府が目標としているCO2の削減についても、吸収源としての森林に対する期待は高いわ

けですが、国際的な取り決めで、森林に手をいれて適正に管理されていないと吸収量がカウントされないわけです。放っておいたままだとCO2が削減されたことにならない。だから民有林を活性化していかなければならないのは必然です。
 一方で日本の戦後の林野行政は国有林野が中心でした。これがかつて国鉄同様に赤字の代表みたいなことになって、国鉄がJRになったように林野特会(国有林野事業特別会計)も最近になって廃止された。さらに民有林では先進的にビジネスとして取り組んでいる林業者もあれば、資金がないこともあって放置状態の林業者が大半だという現実があります。要は、今がボトムなんじゃないですかね。ここからスタートして立ち上げていかないと日本の森林はえらいことになります。
鶴保氏  中長期的にはおっしゃる通りだと思います。今から、という意識は高まってきているように思います。地方がこれだけ疲弊していることもあって、産業としての林業は見直されてきています。なおかつ、シェアリング・エコノミーに代表されるように地方には地方のルールがあるじゃないかという発想がすごく出てきています。たとえば、木造の家の建築基準法であるとか消防法であるとかについても地方なりのやり方があるではないかというようなことです。密集市街地で木造の家を建てるのと、田舎で立てるのとではまったく違うわけですから、何も田舎で建てる家に鉄筋コンクリートが必要というわけではないですよね。
 それと、CLTのような新しい技術によって構造材にも使い得るようなものが出てきていて、こうしたことからも変わり始める予兆があります。今年の年末には耐火実験と耐震実験の基準が出てきますから、来年から爆発的に市場に出ていくと思うんです。ただ、ここに外国産木材を使われたのでは意味がありませんので、間伐材でもかまいませんからサプライチェーンを構築するように我々としては準備していかなければならないと思います。
事務局  先日、建築家で東京大学准教授の川添善行さんと話す機会があったのですが、東京オリンピックに向けて木のオリンピックといったコンセプトの建築の依頼が林野庁からきているそうです。日本の林業は国際的な競争にも勝っていかなければなりません。

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