川井氏  入会地であったり人間に近い里山にスギを植えてはいけないということだと思うんです。戦後の拡大造林でスギを植えたところは元の雑木林に戻していくということが正しいと思います。スギは奥に入った林業地に植えるべきなんだと思いますね。
 もっとも、よく花粉症のことでいわれるのは、山奥のスギ林で仕事をしている林業者が花粉症になるかということなんですね(笑)。恐らくNOxとの複合的な原因があるのではないかといわれますが、実際のところはよくわかりません。
事務局  日本でスギの次に多い樹種というのはヒノキです。川井先生はヒノキについてはどういうお考えをお持ちですか?
川井氏  ヒノキもいいですねぇ(笑)。奈良時代に遡って、どういう木の使われ方をしていたかというと正倉院なんかは良い事例で、正倉(財物や重要書類などを納める倉庫)そのものはヒノキでできているわけですね。ところが唐櫃という物を実際に収めている箱はというとスギなんです。
事務局  つまり組み合わせが工夫されていたということですね。
川井氏  そうなんです。いわば二重の箱になっていて、外側の雨や光が当たって劣化しやすい部分はヒノキを使い、物を納める箱には湿度調整に優れたスギを使っているわけです。こうして1000年以上も実際に保存されています。日本書紀のなかにも、こうした木の使い分けの記述はあって、日本人と木の長い歴史がわかります。
事務局  森林全体の話に戻りますが、当協会が森林保護を推進していく活動の中でも、日本の木をもう少し家や会社で使ってもらえるだけで日本の森林は良くなっていくという声は行く先々で聞かれます。日本の森林の木の蓄積量は増え続けていて、一方で木材の供給量は非常に低い水準のままですから当然のことです。森の木の出口を作っていくことは森林保護の根幹的な解決策のひとつに違いありません。
川井氏  本当にその通りだと思います。森林保護のために当面必要なことは、日本の山から木をおろしてきて、それを町で使うことです。日本の木材の年間需要がだいたい7000万立方メートルくらいあるのですが、その分の木材がちょうど日本の山から出てくるのではないかと思います。山の木を使って、そのことで山を健全な状態にしていく、そして我々の生活を豊かにしていくという流れは非常に理にかなっています。
 もちろん、一歩間違うと今度は切り過ぎになるので全体的な量をコントロールしていく必要がある。そのためにも1年や2年で儲かる儲からないという発想ではなく中長期で30年、50年というスケールでもって森林の管理をしつつ保全をはかることが大事ですし、そのためにも山から出てくる木を最大限に有効活用していく方法論を技術的に開発していく必要があります。

低迷する木材市場に対して増え続ける森林の木の蓄積量


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