日本の行政も林業者も本当に多くの人たちがドイツやオーストリアなどに研修に行ったりしているのですが、ドイツの「黒い森」のように大規模に営々と続けていくような大きな動きにはなっていないのが残念なところです。林野庁も混交林を目指すことが森林の健全化につながるということを最近は認めていて、つまるところいかに低コストで効率的に混交林化ができるかというノウハウの確立が重要になっています。
事務局  混交林化による生態系の改善は森林の公益機能の改善にも、林業そのものにも好影響を与えるという点でも注目されます。
谷関氏  スギやヒノキにとって深刻な害虫であるカミキリムシの天敵というのは鳥なんですね。 特にアカゲラなどのキツツキはカミキリムシの幼虫が好物です。こうした鳥類は広葉樹が混じることで増えてきます。そして、鳥類は低木の木の実を外から運びこんでくれるため、混交林の地表に広葉樹の低木が生えていきます。すると、やがて森林の土壌も公益機能の高い健康的な状態になっていきます。
事務局  人間が鳥を含めて豊かな生態系を味方につけて、日本特有の膨大な人工林を管理していく必要があるということですね。人間の力だけでは、経済的にも時間的にも追いついていきませんからね。
谷関氏  鳥だけでなく、ミミズやトビムシや微生物などの土壌生物にとっても混交林化は非常に効果があります。ご存じの通り、土壌生物が地中に作る孔隙という無数の小さな穴が森林の土壌をスポンジのようにして、雨水を山の中に大量に貯水することができます。増え続ける大雨による災害を防ぐ意味でも、混交林化は有効です。
事務局  生物の多様化というと、私たちの生活とは関係のないもののように考えてしまいがちなのですが、実は水害や土砂崩れなどの災害を防止したり、空気や水を浄化したりする森林の公益的機能を多種多様な生物たちが支えているということを私たちグリーンバナー推進協会ももっと国民の皆さんに広報していかなければならないと考えています。
森の生態系がもたらす恵みが
水を媒介に田畑へ、海へ
谷関氏  グリーンバナー森の恵というプログラムは、森の生態系を改善することが田畑や海の活性化にもつながっていくというコンセプトでしたね。
事務局  そうです。間伐や混交林化など森林が健全に整備されることで、森の養分が水を媒介として田畑へ、そして海へと伝わり豊かにしていくという森林が本来持つ素晴らしいメカニズムを改善して維持していきたいという願いを込めています。この趣旨に賛同してくれた農園や漁協の皆さんのおかげで、プログラムの参加者に出していただいた森林保護支援金額以上の農産物や海産物を「森の恵ギフト」としてお返しできるのがこのプログラムの特徴です。森林保護がもちろん目的なのですが、森林保護の恩恵を受ける農園や漁協に協力いただくことで、森林保護を通じて地域の環境を守っていこうという善意を循環させることを目指しました。
谷関氏  森林保護のお礼が田畑や海から返ってくるというアイデアはとても斬新です。


紀州材の販路開拓に取り組む


バックナンバー

緑の対談 第1回
谷関俊男 氏

緑の対談 第2回
栗本修滋 氏

緑の対談 第3回
川井秀一 氏

第4回 特別企画
鶴保庸介 氏
岸本周平 氏