和歌山県は今でも「きのくに」または「紀州」と呼ばれることがよくあります。「きのくに」は7世紀に「木国」と命名されたのがきっかけで、雨が多く木が生い茂っていたからだといわれています。また、紀州徳川家が統治する紀州藩は林業が主産業で、江戸城を始め各地の大名が紀州材を求めて買い付けたといわれています。

和歌山県の歴史は、森林や木とともに歩んできた歴史といえます。しかし、私たち和歌山県民は、森や木があまりにも当たり前の存在であるからなのか、大切に思い守る気持ちが少し薄くなりがちなようにも思われます。
和歌山県の森は、かつて日本の林業を代表する大産地であったことから、逆に今、私たちの保護の手を必要としているのです。この美しい紀州の森と、森が抱える課題を改めて知っていただきたいと思います。

紀州の森の特徴を知る
特徴1. 和歌山県は県土の77%を森林が占め、森林率は全国で6位というまさに「木の国」です。
特徴2. 森林の約6割がスギやヒノキの人工林です。人工林率の全国平均は約4割ですから、非常に高い水準となっています。
特徴3. 人工林のほとんどは戦後に植林されたもので、木材として利用できる時期にあります。しかし、一方で木材需要が非常に低いため木が過剰に余るという現象が起こっています。経済行為として植林されたスギやヒノキが経済価値を失ったことで整備放置林が広がり、水や空気に与える公益機能や災害防止能力の劣化が懸念されています。
特徴4. 県土の77%を占める森林ですが、人が手を入れていない森林は那智に原生林が少し残されているだけです。それだけ和歌山県民は木を利用し、木とともに生活してきたという証でもあります。私たちが守るべき森林は伐採後に自然に生えた二次天然林と人工林だということを知っておいてください。
紀州の森の生態系
和歌山の森がもつ豊かな生態系を、ごく一部ですが紹介します。南北に長い紀伊山地にはそれぞれの地域にあった生態系が構成されており、種の数も個体数も実に豊富です。
和歌山の森は、私たち和歌山県民の生命を支える水を育み、水害から生活を守っています。そして、その森が持つ機能は、植物を中心に、昆虫、哺乳類、鳥類、両生類、爬虫類、微生物などあらゆる生物がそれぞれの役割を果たすことで成立しています。
ただ、人間と動植物との関係は、ここ和歌山県ではバランスをとるのがとても難しい時代に入っています。和歌山の動植物のこと、ぜひとも一緒に考えてください。

紀北の森
紀の川流域を挟んで南北に広がる山地には豊かな自然が広がっています。また、高野山は標高800メートルにある山上盆地が周囲とは違う気候を生み出して独自の生態系を見せてくれます。写真の美しい動物たちは“害獣”指定を受けてもいます。人間の共生の知恵が問われています。
中紀の森
紀美野町や有田川町など中紀の森林や里山には、豊かな農業文化と動植物が一体となったような里山の自然がいっぱいです。アナグマもモモンガも、オオクワガタやベニイトトンボも民家のすぐ近くの森林にいる生物です。
南紀の森
南紀の大自然には希少な動物がたくさん生息しています。国の天然記念物のオオサンショウウオは古座川で、希少なオオウナギは上富田町や白浜町などで見ることができます。また、日高郡ではハヤブサが、大塔山ではクマタカがよく観測されています。
特別な生態系を持つ森
写真の3ヵ所は、いずれも他にはない独自の生態系をもつ森林です。那智の原始林は古来から熊野那智大社が守ってきたため保存された森林です。新宮市の浮島の森は沼に浮いている日本最大の浮島で、島の上に天然杉が生え、高原性植物まで自生している世にも珍しい森です。

那智の原始林は、158科1,013種もの植物が生息する植物の宝箱です。

新宮市街地にある浮島の森は、国の天然記念物で、学会も注目する独自の植生。

すさみ湾の中央にある稲積島は暖地性植物群が発達した独自の植生です。

紀州の森 絶景スポット
ユネスコ世界遺産に登録された高野山や熊野古道だけでなく、和歌山の自然遺産は観光立県を目指す和歌山にとっての最大の武器でもあります。これらの絶景スポットを活用するだけでなく守り育てる活動も各地で起こっています。
紀州の森を私たち県民の手で放置や荒廃から守っていきたいものです。

紀北の森
冬には降雪する高野山、歴史豊かな有田川上流の森、海を臨む加太の森など紀北には様々な森の表情があります。季節ごとの自然をぜひお楽しみください。

奈良県大塔町から高野山方面に広がる雲海。雲海は10月から3月の早朝が見られる可能性が高いです。

かつらぎ町花園には有田川の上流に沿って個性豊かなキャンプ場があり本格的なアウトドアライフが楽しめます。

和歌山市加太の森林公園周辺では観光協会が日本一を目指してアジサイを植栽し今では絶景となっています。
中紀の森
中紀には人の営みと自然が溶け合った私たちの原風景ともいうべき美しい里山文化が多くみられます。なかには一度崩壊してしまった環境を再生することに成功した素晴らしい例もあります。

有田川町にある、日本の棚田百選にも選ばれた「あらぎ島」です。季節ごとに美しく姿を変える風景は飽きることがありません。

紀美野町と有田川町の境にある生石高原のススキです。毎年10月には時間を忘れるような絶景が見られます。

海南市孟子不動谷にある里山公園です。生態系が崩壊した里山の再生事業として全国的に注目の的です。
紀南の森
南紀の森は、今や世界中から観光客が集まる国際的な絶景スポットの宝庫です。行ったことのある方も、今度行った際はぜひとも森の様子を意識してください。木々がもつチカラと、私たちに助けを求める声の両方が感じられるはずです。

那智大社から見た那智の滝です。古代から続く原生林と世界遺産の歴史建造物が溶け合う日本を代表する絶景です。

田辺市龍神村の小家橋は雄大な森林を結ぶ架け橋です。65m続く橋は高度もあり、全国的に有名です。

紀州の屋根といわれる高野龍神スカイラインの護摩壇山にあるスカイタワーです。紀伊山地の山々が見渡せます。

紀州の森が抱える問題
和歌山県は古来から「木国」と呼ばれ、江戸時代には諸藩を代表する先進的な林業と高品質な木材で森林資源が藩の財政を支えてきました。だからこそ、県土の77%もある森林の約6割を人工林が占めることになりました。

しかし、この30年以上の間、林業は経済的に長期低迷し、国庫補助金や木材の売上だけでは美しい森林を維持することが難しくなっています。また、森林が持つ水や空気を浄化し、災害を防ぐ公益機能も年々衰えていっています。
まず、私たちの和歌山の森が今どうなっているのか、関心をもって頂きたいと願っております。

和歌山の森で起こっている、象徴的な課題をひとつ例に挙げます。
「間伐」という言葉を聞いたことがある方も多いと思います。森林の木が過剰に密集するのを防ぐため適切な間隔になるよう木を伐採して間引く作業のことです。
この間伐を行うことで木の生長が健全化し、森の地表に日光がさすことで低木や下草が生える生態系豊かな森林になっていきます。二酸化炭素の吸収効率においても、間伐は有効です。

ただ、間伐を適切に行うということは、実際には簡単なことではありません。
下の2枚の写真をご覧ください。

南紀の典型的な人工林
地表に散乱している放置間伐材
上の写真は和歌山県南紀の典型的な人工林です。
写真をズームしてみると地表には間伐した木がそのまま放置されているのがわかります。
国の補助金で間伐をしても搬出する資金がなく、このように放置された現場が全国的にみられます。民家の真上にあるこうした放置間伐材は豪雨などによって大災害をもたらす恐れがあります。


木の国とも呼ばれる和歌山県の象徴である森林でも、確実に森林荒廃が進んでいます。
当協会は、皆さまに無理なく森林保護に参加いただけるよう今までになかった新しいプログラムを用意しました。
カラダがよろこぶ、森がよみがえる、野菜&フルーツの定期宅配
「森の恵」 をぜひお試しください。